たとえこの恋が罪でも――時代BL特集
初恋のひとのことをいまでも忘れられない方へ
センシティヴな珠玉作
貿易商の一人息子でハーフの麻倉は、子供のころから苛められていて、誰も愛せない。しかし、幼い頃に唯一心を許した幼馴染み、立花に再会する。立花は早熟で、既に女性経験もあるようだ。そんな立花を見ていると、麻倉は落ち着かない。
秘めた思慕を滲ませるような、繊細な筆致。
ある日、立花から、麻倉のことが好きで、気を紛らわすために他の女性を抱いたと告白される。それ以来、誰かと電話をする立花を見ただけで、胸に突き刺すような痛みが走るようになる。女が相手なのか? と――
「他人のように突き放したり、やさしくしたり、お前の本心がわからない……」
初めて知った嫉妬の意味、人を好きにならなければ起こらない苦しみ。理性では押さえきれない渦巻く感情に混乱し、麻倉は途方に暮れるのだった。
そんななか麻倉は令嬢との見合いを、立花は父親の会社の倒産で退学を余儀なくされ、ふたりは引き裂かれる。
粋な江戸文化にタイムリープしたい方へ
リアルに蘇る浮世絵のような江戸の≪色≫
『男色大鑑』から百年後、男色文化が翳りを見せ始めた江戸末期。
ある雨の日に、陰間の百樹は、美男の卍に出逢い、拾われる。
百樹はでかい図体にもかかわらず、仔犬のような甘えん坊で、元陰間のくせにおぼこくて、辛い過去があったにもかかわらず天真爛漫な青年だ。いかにも女にもてそうな、役者のような艶っぽい卍だが、そんな百樹に心底惚れている。
長屋で熱くまぐわう日常は、極上に甘い。
数知れぬ男たちに弄ばれた、暗い過去がある百樹にとって、陰間としてではなく、義兄弟の契りを結んだ関係として愛される日々は、溺れるほどの幸福だった。だが、卍はどこか捨て鉢で、影がつきまとう。
その理由が次第に明らかにされて、ふたりの関係は……。
禁忌のエロスを感じたい方へ
愛憎うずまく大河ロマン
育郎にとって家庭内は、暗く、孤独で陰湿な場でしかない。座敷牢に匿われる妾腹の兄に、父の関心のすべてを奪われていたから。
「男同士で関係を持つ意味がない」と嘯きつつも、
これは単なる性欲処理だと育郎を嬲る典彦
そんな育郎を、使用人の典彦は蛇のように愛した。口づけを教え、股を開かせ、育郎に快楽の種を植え付け、体をいやらしく変えていく。
無垢な青年は快楽の秘密を知る――
やがて父が死に、育郎は当主として妻を娶る。だが、夫婦の営みはなく、相変わらず典彦に依存しつづける。
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