リスちゃんのメスお兄さん研究所|手に汗握れ!サスペンス×BL

皆様こんにちは!
前回のコラムでは「探偵ものとBLの相性は良いのではないか!?」というテーマで語らせていただきました、メスお兄さん愛好家のリスちゃんと申します。

突然ですが、皆様はどのような作風を好んで読みますか?

後輩攻めくんが部活の先輩メスお兄さんに密かな片思いをする爽やか青春学生もの?
押しかけ女房のメスお兄さんに生真面目童貞攻めくんが貞操を狙われるものの毎回未遂に終わるドタバタ寸止めラブコメディ?
おっとりメスお兄さんのことが放っておけないお人よし攻めくんのほんわかかわいいゆるゆる同棲BL?
都会からやってきた民俗学者の攻めくんが田舎の因習に巻き込まれた先で出会う座敷牢育ち生贄メスお兄さんのお話?

私はどれも好きです。大好きです!
ほのぼのから過激なものまで、さまざまなジャンルのBLを嗜みます。

そして、なかでもとりわけ好みなのが「ホラー」「ミステリー」「サスペンス」の要素がある物語です。



  • 紙の舟で眠る【単行本版】上

    • 著:八田てき
    戦後、横浜。元・天才脚本家の憬は、もう筆をとらないと決めていた。脚本のモデルにした人物が、必ず不幸になるからだ。ただ死を待っていたが、ある日、生きる理由が現れてしまった。それは泥酔していた憬を、居候先の娼館で介抱してくれた燿一。彼の無邪気さと妖艶さに、惹きつけられずにはいられず、どうしても燿一を書きたくなる……。他の誰を犠牲にしても、何を犠牲にしても、燿一だけは不幸にはしないと誓うが――。

舞台は戦後の横浜。
日本人と外国人が入り乱れる異国情緒豊かな街で、物語は始まります。

主人公の北原憬は俳優顔負けの美貌を持ち、かつて一世を風靡した天才脚本家です。しかし、その栄光も既に過去の話。今の彼は、場末の闇酒場でアルコールに溺れる日々を送っていました。

彼には幼いころに巻き込まれた市電の衝突事故のトラウマがあります。
憬ともう一人、同じくらいの年頃の男の子だけが生き残ったという凄惨な事故でした。
そんな大事故から奇跡的な生還を果たした憬は、それ以来、自分の体の中から「言葉」が溢れて止まらないという、特異な体質になってしまいます。
彼はそんな自身のことを「死神に取り憑かれた」と感じていました。

憬を悩ませるもの……それは、自分が書いた脚本の主人公のモデルが、次々に不幸な最期を遂げるというものでした。
恐怖と困惑、そして贖罪のため、憬は筆を折る決断を果たします。

そんなある日。
土砂降りの街の路地裏で、憬はひとりの青年と出会います。

憬のことを知っている様子の青年に招かれ、憬は彼の家だという場所まで案内されます。
和洋折衷の赴がある建物、娼館のような雰囲気だけれどどこか違う広いダンスホールで、華やかな恰好をした女性たちが日本人・外国人問わず男性とともに軽快なダンスを楽しんでいました。

青年の部屋に足を踏み入れると、至る所に干されている大量の写真が目に留まりました。
写真を撮るのが趣味だという彼は、人々の日々の何気ない生活の瞬間にシャッターを切ることが特に好きだと語ります。

脚本家・北原憬のファンだと語る青年は、三上燿一と名乗りました。

あの夜以来、燿一と憬はたびたび顔を合わせる仲になりました。

子犬のように無邪気に懐いてくる燿一に絆されていく憬。
写真家と脚本家という表現者同士故なのか、ふたりは不思議と惹かれていきます。
しかし、燿一と共にいればいるほど、憬は筆を取りたくてたまらなくなってしまいます。
これ以上罪を重ねたくないのだと苦しみもがく憬を嘲笑うかのように、頭の中に死神の吐く言葉が反響するのです。

憬は、大きな決断をします。
燿一と体を重ね、糧とすることで、死神をねじ伏せ、忌々しい呪いを克服しよう……と。

背徳的な肉体関係を通じて、燿一に対して底知れぬ心の騒めきを覚える憬。

数か月後。
燿一との逢瀬を重ね、憬はついに一本の脚本を書き上げることができました。
頭の中の言葉の洪水もぴたりと止まり、死神の幻影に悩まされることもなく、無事に完成させた原稿を持って、彼は懇意にしてもらっていた映画会社の社長のもとを訪れます。

これにて万事解決。憬は仕事に復帰し、憬の専属で活動記録を撮影すという名目のもとに燿一をそばに置き、映画の撮影はスムーズに進行――……すべては順調に事が進んでいるかに思えました。

ところが。
燿一と寝るごとに、憬は悪夢に苛まれるようになります。
地獄に堕ちようと甘く囁きながら憬を殺めようとする燿一。これは夢だと思いつつ、不穏な影が憬につき纏い続けます。

もう誰も不幸にしたくない……。死神とは決別したはずだ。
憬の願いは虚しく、奇妙なことに、書いている脚本の主人公と同じ言動を燿一は取るようになりました。彼の発する言葉、一字一句が脚本のそれと同じです。

まるで消えた死神が燿一に成り代わっているかのような現実にゾッとする憬。
どうか燿一だけは……と苦悩する憬に、映画会社の社長は更に酷な要求をしました。
他でもない、憬自身を主人公とした脚本を制作せよというオファーです。
そんなことをしたらどうなってしまうのか。自分の命を賭けろと言われているも同然のそれに「人柱になれと言うんですか」と慄く憬。
燿一の写真家としての成功を約束するとまで言われ、彼は揺れ動きます。

燿一に事情を話さないまま、ひとりで抱え込む憬。
もう会わないほうがいいのかとさえ思い、連絡を絶つも、ふとした偶然から再会を果たします。

このままペンを走らせ、憬は自らの命を囮に脚本を完成させてしまうのでしょうか?
憬の脚本の主役が次々と死を迎えるという因果関係とは?
燿一との関係はどう変わっていくのか?
死神とは一体なんなのか?
なぜ憬の頭の中には文字が湧いてくるのか?
過去になにがあったのか……?
衝撃の結末は、ぜひ本編でお楽しみください!

闇と光を体現するような、燿一のこの温度差は一体……!?

ハラハラドキドキ、ふたりの最後を見届けるまで目が離せません。
まるで一本の重厚な映画を観ているかのような読後感。
恋愛要素はもちろん、先の読めないサスペンスな展開に没頭してしまうこと間違いなし。
前後編の2冊で読み応えは抜群です。

しっかりとした骨太なストーリーも、妖艶なシーンも、甘くてほろ苦い恋愛模様も、すべて楽しみたい!

そんな欲張りな方へぜひおすすめさせていただきたい一作です。



  • 紙の舟で眠る【単行本版】上

    • 著:八田てき
    戦後、横浜。元・天才脚本家の憬は、もう筆をとらないと決めていた。脚本のモデルにした人物が、必ず不幸になるからだ。ただ死を待っていたが、ある日、生きる理由が現れてしまった。それは泥酔していた憬を、居候先の娼館で介抱してくれた燿一。彼の無邪気さと妖艶さに、惹きつけられずにはいられず、どうしても燿一を書きたくなる……。他の誰を犠牲にしても、何を犠牲にしても、燿一だけは不幸にはしないと誓うが――。

いかがでしたか?

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それでは、次回のコラムでまたお会いしましょう。

筆者

mikiko.art

リスちゃん

メスお兄さんと美少年と年下ワンコ攻めが性癖の、メスお兄さんをこよなく愛するBLオタク。メスお兄さんをすぐ座敷牢に入れる。創作BLも手掛け、X(旧Twitter)のフォロワーは1.5万を超えるメスお兄さんの伝道師。