リスちゃんのメスお兄さん研究所|読書の秋、メスお兄さんの秋

皆様こんにちは!前回のコラムでは「親戚のキレイなお兄さんに振り回される年下攻め」というコラムを書かせていただきました、メスお兄さん愛好家のリスちゃんと申します。

早いものでこの連載ももう10回目です。世の中にはすばらしい年下わんこ攻め×年上美人受けの作品がたくさんあって、性癖に刺さるお話に出会えた日にはとっても幸せな気持ちになります!
そんな私の好きなものを皆様に共有できることが何よりもうれしいです。読んでくださってありがとうございます。

さて、突然ですが皆様は「偉いイケオジの愛人として囲われているお兄さん」についてどうお考えでしょうか?
おいしい?かわいそう?報われてほしい?そんな生活は今すぐやめろ?
十人十色の多種多様な意見が出てくることでしょう。
年上でお金持ちで人でなしのおじさまの愛人として飼われて、気まぐれに抱かれて、今更真っ当な暮らしに戻れるはずもなく、ただいたずらに時間だけが過ぎ、年を重ね、狭い世界と限られた人間関係だけで世界が完結しているお兄さん……。
個人的に「美人な受けの幸は薄ければ薄いほどいい」を信条としているので、そんなかわいそうな設定、ぐっときてしまうに決まっているのです!

いいですよね、愛人のお兄さん。
どこか浮世離れしていて、誰かから愛されたい・必要とされたいと思っているのに、何もかも諦めているような雰囲気で……。
そんな美人のお兄さんがある日突然現れた年下の若い男にかっ攫われてしまうBL、メスお兄さん愛好家の皆様はお好きな方も多いのではないでしょうか?
(どうしてこうも「愛人」「人妻」「団地妻」「未亡人」というキーワードに惹かれてしまうのか……。謎は深まるばかりです)

今回はそんな幸の薄い(元)愛人のお兄さんと、そんなお兄さんを幸せにしてやりたいと奮闘する健気な年下攻めというとっておきの作品をご紹介させていただきます!
しっとりとしていて優しく穏やかで、何気ない日常をひとつひとつていねいに紡ぐような文体が美しい小説です。



  • 元愛人と年下の犬

    • 著:とらのとら 画:斎賀時人
    冗談だよ、ばか。何もいらない。おまえがいれば

    これまで「ちゃんとした恋愛」をしてこなかった朱鷺。
    夜の神社で一目惚れをした相手は、二十年無職の肩書き・元愛人の男で…。

    三十八歳にして、やるせないほどの恋に落ちてしまった。友人との飲み会帰りの朱鷺が、たまたま立ち寄った神社。そこから見えるマンションのベランダに、酒を呷る美しい男・瑠璃はいた。朱鷺は在宅勤務のシステムエンジニアで、そこそこ堅実な人生を送っている。燃えるような恋の経験はない。それでも勢いのまま瑠璃に告白をするが、彼は二十年無職で失恋したばかりだから、と朱鷺を振り、その後は何度言い寄っても思わせぶりに躱されて――。

「三十八歳にして、やるせないほどの恋に落ちてしまった。」

そんな冒頭から始まる今作の主人公の名前は朱鷺。
システムエンジニアとして在宅で働き、穏やかな人柄と安定した生活で、静かに、しかし何不自由なく暮らす彼は、38年生きてきて一度も身を焦がすような恋愛の経験がありません。

そんな朱鷺が友人との飲み会の帰り道、偶然立ち寄って参拝をした神社の隣に建つヴィンテージマンションで、バルコニーに佇む一人の男性に目を奪われてしまいます。
目が合った瞬間、微かに微笑みを浮かべてくれたその人のことが頭から離れなくなるという一大事。
いつしか彼との再会を心待ちにして、夜の神社へ足を運ぶようになってしまいます。
「時間、ありませんか」と尋ねる朱鷺に「時間?たくさんあるよ。たくさん」と返す彼はどこか浮世離れしていて、何やらわけありの様子。
二人は後日改めて近所の喫茶店で話をする約束をします。

個人経営のレトロな喫茶店で待ち合わせ、互いに自己紹介……の流れにはならず、注文直後、朱鷺は流れるように言いました。

「あの、おれ、あなたが好きです。つき合ってもらえませんか」

開口一番に飛び出した愛の告白にもまったく動じることなく、けろりと煙に巻きながら彼は名乗ります。
瑠璃と名乗った男性。
朱鷺は驚きました。というのも、朱鷺が生まれるときに彼の母親が名づけの候補として挙げていたのが「朱鷺」もしくは「瑠璃」だったからです。
そういった縁もあり、朱鷺の一番好きな色はウルトラマリン。そう、瑠璃色です。
なにやら運命じみたものを感じる朱鷺に、瑠璃は自己紹介を続けます。
年齢は43歳。
会社員とは思えない雰囲気に「作家ですか?」と聞く朱鷺。しかし瑠璃の答えは朱鷺のまったく想定外のものでした。
驚くべきことに、瑠璃は20年無職として暮らしています。20年という長い年月を、愛人として飼われることで消費していたのです。

その恋人にふられたばかりで、しばらく恋をするつもりはないという瑠璃。
朱鷺はあっさりとふられてしまいました。

が、彼は諦めません。
瑠璃の住む、神社の隣のマンション。招かれてもいないのに、居ても立っても居られなくなった朱鷺は、瑠璃の部屋に突撃します。
「諦められない。あなたが好きだ」
それは、朱鷺の38年間の人生の中、一番心が揺れ動いた感情でした。
年下の男の真っ直ぐな激情をぶつけられ、瑠璃は「友達から」という条件のもと、朱鷺に付き合ってくれることになりました。

いつしか二人は、土曜日の朝に件の喫茶店で逢うようになります。

朱鷺が瑠璃の過去をそれとなく詮索しようとしても、愛の言葉を伝えても、彼はのらりくらりと躱してごまかします。
そのくせ「おまえのセックスってすごくよさそうだから、ハマったら困るので部屋には上げてやらない」などと言い、朱鷺の心を惑わせる。
そんな思わせぶりばかりの態度に、朱鷺は始終やきもきしっぱなしです。(これこそ経験豊富な年上受けの醍醐味ですね!)

瑠璃の心の中に、別れた恋人がまだ残っていることを、朱鷺は悟っていました。
瑠璃よりきっと年上であろうその男。愛人を囲えるほどの余裕を持った、社会的地位の高い男。瑠璃の人生の20年を奪うだけ奪い、飽きたら捨てるひどい男。
顔もしらない元恋人に、嫉妬の念は消えません。

朱鷺に気のない素振りを見せる瑠璃ですが、実は朱鷺が思うほど彼は飄々とした掴みどころのない人物というわけでもありません。
朱鷺が喫茶店へやってこない週があると、そわそわと落ち着かない様子で朱鷺のことを待ち続けます。じわじわと浸食されていくように、瑠璃の心の中に朱鷺が入り込んでいるのです。
瑠璃は20年もの歳月を社会生活から隔離されていたことを、本当はコンプレックスに思っていました。唯一つながりがあった恋人に捨てられ、時が止まったかのようなヴィンテージマンションと喫茶店だけが今の瑠璃の世界だったのです。
そこに突如乱入してきた侵入者が、朱鷺でした。

知らぬ間に朱鷺の存在が瑠璃の中で大きくなっていき、久しぶりに朱鷺と再会瑠璃は、感極まって泣いてしまいました。

瑠璃が泣いた日。
それは、はじめて朱鷺が瑠璃の部屋を訪れることを許された日になりました――……。

瑠璃は朱鷺を受け入れてくれるのか?
朱鷺を取り巻く人間模様の行く末は?
瑠璃はつらい過去を吹っ切ることができるのか?
二人は今後どのように暮らしていくのか?

気になる二人の恋の結末を、ぜひ本編で見届けてください!

美しく繊細な情景が目に浮かぶような、そんな作品をお求めの方におすすめの一冊です。
秋の夜長に小説、いかがでしょうか?

なお、優しく穏やかな文体で物語もゆっくりと進んでいくため、濡れ場はどちらかというと上品で控え目……かと思いきや、とっっ……ても濃厚です!(朗報ですね!)

積極的な瑠璃に翻弄される朱鷺。朱鷺のスタミナに泣かされてしまう瑠璃。

執着心つよつよ年下攻め×精神的には優位だけど肉体的には攻めに敵わない年上受けが性癖の方のツボをしっかりと押さえているため、はじめて二人が結ばれるシーンは「あぁ~~これこれ!!これが見たかったんです!」と思わず膝を打ってしまいます。

ずるい年上の受けをお求めの方。
そんな年上受けをどこまでも追いかける気概のある年下わんこ攻めをお求めの方。
読書の秋にふさわしい一冊をお探しの方。
こちら、必見です!



  • 元愛人と年下の犬

    • 著:とらのとら 画:斎賀時人
    冗談だよ、ばか。何もいらない。おまえがいれば

    これまで「ちゃんとした恋愛」をしてこなかった朱鷺。
    夜の神社で一目惚れをした相手は、二十年無職の肩書き・元愛人の男で…。

    三十八歳にして、やるせないほどの恋に落ちてしまった。友人との飲み会帰りの朱鷺が、たまたま立ち寄った神社。そこから見えるマンションのベランダに、酒を呷る美しい男・瑠璃はいた。朱鷺は在宅勤務のシステムエンジニアで、そこそこ堅実な人生を送っている。燃えるような恋の経験はない。それでも勢いのまま瑠璃に告白をするが、彼は二十年無職で失恋したばかりだから、と朱鷺を振り、その後は何度言い寄っても思わせぶりに躱されて――。

いかがでしたか?

La Roseraieでは、漫画や雑誌はもちろん、小説のラインナップも豊富です!
読みやすくライトなBLから、愛憎渦巻くドロドロとシリアスな小説まで、幅広い品揃えの中からぜひお気に入りの一冊をLa Roseraieで探してみてください!

それでは、次回のコラムでまたお会いしましょう。

筆者

mikiko.art

リスちゃん

メスお兄さんと美少年と年下ワンコ攻めが性癖の、メスお兄さんをこよなく愛するBLオタク。メスお兄さんをすぐ座敷牢に入れる。創作BLも手掛け、X(旧Twitter)のフォロワーは1.5万を超えるメスお兄さんの伝道師。